「翡」「翠スイ

「翡」
新字源(角川)「かわせみ。おすを翡、めすを翠という」
新漢語林(大修館)「かわせみ。鳥の名。雄を翡、雌を翠という」
漢辞海(三省堂)「カワセミ科の小鳥。かわせみ。《翡が雄で、翠が雌》」
漢字源(学研) 「翡翠とは、鳥の名。カワセミ科の水鳥。光沢のある青緑色の美しい羽毛をもつ。カワセミ。ショウビン。おすを翡、めすを翠という」

「翠」 
新字源(角川)「かわせみ。おすを翡、めすを翠という」
新漢語林(大修館)「かわせみ。水辺に住む鳥の名。雄を翡、雌を翠という」
漢辞海(三省堂)「カワセミ科の小鳥。くちばしは長大で、羽毛は美しい青緑色を呈する。かわせみ。《翠が雌で、翡が雄》」
漢字源(学研) 「鳥の名。カワセミ科の水鳥。背は光沢のある青緑色。くちばしは長く、尾は短い。水辺にすむ。カワセミ。ショウビン。▽雄を翡、雌を翠といい、仲の良い鳥とされる」

[考察]
翡と翠の記述は四辞典ともほぼ同じ。新字源・新漢語林・漢辞海は「かわせみ」とし、漢字源は「カワセミ、ショウビン」とする。
カワセミについては「鳥の名の漢字(8)・鴗」でも述べている。カワセミの類を表す語に翡翠もある。翡と翠はそれぞれ単名なのか、翡翠で一語なのか。『説文解字』では「翡は赤羽雀、翠は青羽雀とし、色の違いがあるという。しかし翡だけの単名の用例はほとんどない。翡は翡翠で使われるだけである。だが翠だけの単名は戦国時代から用例がある。『山海経』『楚辞』などに翠だけで使われている。だから翠の単名が古いようである。
『山海経』西山経に「其の状翠の如くして赤喙」、同・海内外経に「翠鳥有り」とあり、郭璞の注に「翠は燕の如くして紺色」とあり、ニーダムと郭郛は翠をAlcedo atthisに同定している(『中国古代動物学史』『山海経注疏』)。これはカワセミ科カワセミ属の鳥、カワセミである。
一方、翡翠は『韓非子』外儲説左上に「輯むるに翡翠を以てす」、『楚辞』招魂に「翡翠珠被」などの用例がある。中国の動物学では翡翠をHalcyon、すなわちカワセミ科ヤマショウビン属に同定している。ただし古典の注釈では赤い羽をもつものを翡、青い羽をもつものものを翠とするものもある(『淮南子』の高誘注など)。そうすると翡はアカショウビン、翠はアオショウビンなのかもしれない。しかし雄を翡、雌を翠とする注釈もある(『楚辞』の注釈など)。これを否定する意見もある(『漢書』の顔師古注)。翡と翠を合わせてショウビン類の総称としたのか、あるいは翡翠の一語でショウビン類の一種を指したのか明確ではない。中国にはヤマショウビン、アオショウビン、アカショウビンなどが生息するという。常見の種はH.pileata(ヤマショウビン)だが、中国の本草学ではH.smyrnensis(アオショウビン)に同定している(『中薬大辞典』下巻)。

[正しい語釈](案)
「翡」 翡翠はカワセミ科ヤマショウビン属の鳥の総称。翡は羽が赤いもの、翠は羽が青ものとする説、翡は雄、翠は雌とする説がある。中国にはHalcyon pileata(ヤマショウビン)、H.smyrnensis(アオショウビン)、H.coromanda(アカショウビン)が生息。体長は30センチ内外。カワセミに似る。くちばしは長く赤い。平原や水辺にすみ魚などを補食する。
典拠:『韓非子』外儲説左上「輯むるに翡翠を以てす」、『史記』司馬相如伝「翡翠の威蕤イズイたるを錯まじふ」(集解に、張揖云ふ、翡翠の大小一に雀の如し。雄赤きを翡と曰ひ、雌青きを翠と曰ふ」)

「翠」 カワセミ科カワセミ属の鳥の名。体長は17センチほど。くちばしは大きく長い。雄のくちばしは黒色、雌のくちばしは下が赤色。頭は緑色、背は青色。水辺にすみ、魚を補食する。カワセミ。Alcedo atthis
典拠:『山海経』西山経「其の状翠の如くして赤喙」、同・海内外経「翠鳥有り」(郭璞の注に「翠は燕の如くして紺色」)