「鷲シュウ

新字源(角川)「わし。タカ科の大形の猛禽。特に、いぬわし」
新漢語林(大修館)「わし。全身黒く、猛鳥の代表的なもの」
漢辞海(三省堂)「タカ科の猛禽のうち大形のものの総称。わし」
漢字源(学研)「わし。鳥の名。タカ科の猛鳥。性質がたけだけしく、鋭いつめと、くちばしで、鳥獣に襲いかかって食う」

[考察]
新字源は「わし。特にいぬわし」、新漢語林は「わし」、漢辞海は「タカ科の大形のものの総称。わし」、漢字源は「わし」とする。
漢字源を除いた三辞典では「鵰」でも同じような記述をしている。鷲と鵰の区別がないようである。
鷲の字は漢代の『説苑』(前漢・劉向)に初出。しかし『山海経』に就が出ており、これが鷲と同じされている。同書の中山経に「暴山・・・その獣麋・鹿・麂・就多し」に対する郭璞の注に「就は鵰なり」とある。また『漢書』匈奴伝の「奇材木、箭干就羽を生ず」に対する顔師古の注に「就は大鵰なり。黄頭赤目。其の羽を箭と為す」とある。郭郛は『山海経』の就を禿鷲(Aegypius、クロハゲワシ)と兀鷲(Gyps、シロエリハゲワシ、またはヒマラヤハゲワシ)に同定している(『山海経注疏』)。また郭郛は、鄭作新の『脊椎動物分類学』によると鷲と鵰は区別され、鷲は禿鷲や兀鷲を表し、鵰は金鵰(Aquila、イヌワシ属)を表すと述べている。
『説文解字』では「鷲は鳥、黒色多子。師曠曰く、南方に鳥有り。名を羌鷲と曰ふ。黄頭赤目。五色皆備はる」とある。この羌鷲はクロハゲワシの可能性がある。体色が黒くというほかに、黄頭は羽毛がなく裸出して褐色であること、赤目は虹彩が褐色であることを言っていると推測される。これらの特徴はクロハゲワシと合うようである。
時代は降るが、『南斉書』東南夷伝に「屍を中野に燔きて以て葬を為す。遠界に霊鷲鳥有り。人の将に死せんとするを知り、其の家に集まり、死人の肉を食ふ」とある。この鷲はまさしくハゲワシである。ハゲワシに死体を食わせる風葬の習慣を述べている。
ワシの類には腐肉を食う種類がある。これがハゲワシ類である。ハゲワシは足の指が短く力が弱いわりには喙が強大で鋭く、動物の死体を食う食性がある。空中で旋回して獲物に襲いかかって捕食するイヌワシとは違う。漢語ではイヌワシを鵰(雕)といい、ハゲワシを鷲という。『禽経』では「鵰は之を周り、鷲は之に就く」と語源を説いている。就は「近くへ寄りつく」というイメージがある。鋭い爪がなく獲物を引き裂いて食うことができず、屍体に寄りついて食べるワシの類を鷲と名づけたのである。

[正しい語釈]
タカ目タカ科ハゲワシ亜科の鳥の名。ワシ類のうち腐肉を食うものの総称。特に、クロハゲワシ。全長は1メートル以上。体は黒褐色。頭部は裸出する。くちばしは鉤形に曲がって鋭い。動物の屍体を見つけるとたくさん集まってくる。禿鷲トクシュウ。Aegypius monachus
典拠:『説苑』雑言「飛鳥列を成せば、鷹鷲も撃たず」、『説文解字』「鷲は鳥、黒色多子。師曠曰く、南方に鳥有り。名を羌鷲と曰ふ。黄頭赤目。五色皆備はる」